2010年9月29日水曜日

ブランド王国スイスの秘密

ブランド王国スイスの秘密

人口わずか730万人の資源も無い小国が、世界有数の企業を抱え、発達した金融市場を持ち、世界中から『ひと、もの、かね』を集めることに成功している。

スォッチグループ:スイス時計=高級ブランドという画一的なイメージを覆し、新しい像を創りあげた。しかし、その傘下にはブレゲやブランパンなどの高級ブランドも抱えている。

LVMH:一つ一つのブランドは独立して展開させ、時にはライバルとして競争させながら市場を制していった。

複数のブランドを展開するに当たっては、それぞれの「ブランド」に特徴を持たせてターゲットを明確にわけ、ブランドのポートフォリオを構成できるかどうかが成功の鍵を握る。

スォッチの成功:時計を精密機械ではなく、ファッションとして創る。春秋にコレクションを発表。半年の期間限定で商品をプロモーションしていく。

値下げ競争を続けていると、消費者は製品に敬意を示さなくなる。日本メーカーは価格を重視して戦略を建てているが、将来的には壁にぶつかるだろう(中国との競争)

ネスレのブランド戦略:膨大なブランドを効率的に運営するため、ブランドをレベルに応じてコーポレートブランド、世界戦略ブランド、地域戦略ブランドに階層別に管理。

買収後もブランド名をそのまま残す。基本的に、巨大資本を持つ企業は製品ブランドが大衆化しているため、のれん価格の高いブランド買収・その後の戦略には注意して取り組む必要がある(買収なのか、合弁なのか、協定なのか)

ネスレの買収戦略:中核事業に近く、ノウハウを生かせる分野に限って買収を進める。

ある会社を買収した際の価格と、その会社が持つ資産価格の差を一般にのれん代として計上するものが、おおむねブランド価格であろう。(村上の阪神電鉄買収計画もここにあり。不動産などの固定資産が、株式時価総額を超える企業は少なくない。)

日本は、品質への評価をブランド価値に結びつけることに失敗した(取り組まなかった)。ブランドマネジメントが行われていなかった。
スイスの産業
エリート大学生のパートタイムの自給は2530スイスフランン(2500円前後)、大企業に
就職した大卒者の給料は年収1000万をくだらない。

スイスには基本的に相続税が無いため、多くの海外の富裕層が移り渡ってくる。また、企業にかかる法人税も他の欧州諸国に比べ低い。最も税率が低いツーク州は15.7%にすぎない。ちなみに、日本では46.2%となる。

たとえ低い税率でも、そこに住む人たちがお金持ちで構成されているならば、税収は十分な額に登る。問題は、ほそぼそと経営を営む飲食店・スーパーなどに現れると考えられる。スイス国内で買い物をすると、商品の価格が他国に比べ2倍ぐらい高いため、国外で買い物を済ませればよい。

クレディスイス・UBS:覆面取材により、海外からの不正マネーをスイスの銀行へ持ち込む助言を行っている。スイスでは海外での脱税が刑法に問われることが無いが、脱税するために、偽の文章などを他国の税務当局に提出すれば犯罪となる。意図的な申告忘れは刑法にひっかからない。

スイスの政治:7人いる閣僚が一年交代で大統領を務める仕組みを持つ。

資産家が集まるスイスは、世界屈指の美術品市場。国際的に活躍する美術商も多く、世界の美術品の中継地点とも言われる。

かつてのスイスは、産業が乏しく、隣国へ傭兵として雇われることで収入を得ていた。ツヴィングリはこの傭兵制度を国の活力を弱める悪しき習慣として強く批判し、産業化への変革を提唱した。

スイス・リーのクンバー曰く「事業の多くは外部委託できるが、高度の実践知識だけは外注できない。」事業の核である再保険に関する高度な知識を持つ人材を集めるには、世界中からリクルートしてくるという人事の内なる国際化が必要であった。そして、現在、保険は証券化やスワップなどの知識も要するまでになっている。

経済の総本山、ダボス会議:世界の経営者の関心が世界各国の貧困や気候変動などに向いているのに対し、日本では自国の貧困(貧困ではないのだが)、自国の利益に傾いた考えか確か広まっていない。

ブランド構築に失敗したケースもある。スイス航空が典型例。
隣国との航空縄張り争いに関し、出遅れたため、経営の方針が二転三転することになった。

観光に関しても衰えが見られる。オーストリアの家族連れをターゲットにした付加価値の高いパッケージホテルサービスに押されている。スイス側にも経営革新・努力が必要とされる時代になった。

スイスに学ぶ知恵
・高付加価値経済の実現:加工品にどうやって付加価値をつけていくか。原価の3倍の値段をつけることが出来る術を模索するべき。
・プラーベートバンクにみる、顧客とパートナーの信頼関係の構築。銀行が破産する時は、顧客の資本だけでなく、パートナーの資本も全てなくなるというリスクを共有するコトで、信頼関係を築く。
・若手登用:スイスの大学を卒業した若者で企業に入るとすぐに管理職ポストにつく。若手に機会を与え、企業をボトムから成長させるモデルを築いている。日本企業に見られるような、組織の高齢化は若者の雇用を圧縮してしまう。55歳定年で十分だろう。しかし、若者を見下す日本の風土を根本から変えていかないと実現は難しい。

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